営農型太陽光発電は、平成25年3月31日に農水省が「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備についての農地転用許可制度上の取扱いについて」という通知を発表して、営農型太陽光発電に対する農地転用許可の取り扱いを明確にしたことによりスタートしました。

5年間で約1,000件の許可実績があるということですが、農水省がまとめた実態調査によるとある傾向がわかってきました。平成27年度末までに許可を受けた775件のうち、太陽光発電設備を設置したことにより下部農地での営農に支障があった施設が81件あったということです。(但し、下部農地での営農に支障が生じたものと下部農地の面積が1,000㎡を超えるものを対象に調査。合計321件を対象)

このうち農業の担い手が営農している場合は営農に支障が出たのは80件中5件、わずか8%であるのに対し、担い手以外のものが営農しているケースでは241件中76件、31%に支障が出たということです。支障が出るということは作物が順調に成長する環境にないということであり、これは太陽光発電を設置することによる遮光率と、下部農地で栽培する作物の選定が計画当初から間違っていた可能性があります。

同じく遮光率に関する統計データでは732件(100%)中、各遮光率ごとの件数は次の通りです。

0~20% ・・・36件(4.7%)

20~30%・・・108件(15%)

30~40%・・・176件(24%)

40~50%・・・110件(15%)

50~60%・・・91件(12%)

60~100%・・211件(28%)

遮光率が60%以上の設備では、榊、わらび、みょうが、椎茸、ウド、きくらげなど光飽和点の低い作物を栽培しているものと思われます。それぞれの遮光率でどのような作物が適しているかということは慎重に考慮すべき基本事項です。それと共に支障をきたしている事例では、営農型といえども太陽光発電がメインであり、下部農地での営農を真剣に考えていなかったというのが当事者の本音ではないでしょうか?

営農型太陽光発電に取り組むのであれば、先ずは下部農地で何を作るか、そしてその栽培、収穫にはどれほどの人手を要するのか、そこからの収入はどの程度なのかをしっかり計算し、結論を出すべきです。そして太陽光発電からの収入は、農家が本業を経営してゆく上で、ゆとりを持つためのプラスアルファの収入と捉えることが必要です。

今回、東北から大規模な営農型太陽光発電の設置に向けた相談を受けました。今年度の申請であれば、売電単価は1Kwhあたり18円です。この売電単価で1メガクラスの投資をするには、下部農地での農業収入が太陽光発電の売電収入に匹敵するくらいでなければなりません。その実証を東北で実現させていきたい。農業と太陽発電が調和して全国に広がっていくよう、今回のプロジェクトに対して最大限の支援をしていきます。